Grid Infrastructureのインストール

Grid Infrastructureのインストール

この記事でやること

第5回では、第4回で準備した環境にGrid Infrastructure(GI)19.28 RU をインストールします。

手順内容対象
5-1Grid Infrastructureのインストール(OUIウィザード)ノード1(GNOMEデスクトップ)
5-2RECOディスクグループの作成ノード1
5-3OPatch確認ノード1・2

GIインストールは 1号機のGNOMEデスクトップ でGUIウィザードを使用します。インストールには30〜60分程度かかります。


事前準備:スナップショットの取得

GIインストールは失敗時のクリーンアップが非常に困難です。必ずスナップショットを取得してから実施してください。

両ノードをシャットダウンします。

shutdown -h now

Proxmox管理画面(https://192.168.1.100:8006)でスナップショットを取得します。

VMスナップショット名
ol8-rac19-21before-gi-install
ol8-rac19-22before-gi-install

※ 本環境の値。各自の環境に読み替えてください。

スナップショット取得後、両ノードを起動してから次の手順に進みます。


5-1. Grid Infrastructureのインストール(ノード1、gridユーザー)

インストーラー起動コマンド

Proxmoxのコンソール(noVNC)でノード1(ol8-rac19-21)のGNOMEデスクトップに gridユーザーでログイン し、端末エミュレータからインストーラーを起動します。

# ホストとユーザの確認
hostname && whoami

export CV_ASSUME_DISTID='OL7'   # 必須: 未設定だと [INS-08101] NullPointerException で起動しない
export LANG=ja_JP.utf8
cd ${ORACLE_HOME}
./gridSetup.sh -applyRU /tmp/oracle-install/37957391

OUIウィザードが起動します。以下の順に設定します。


ステップ 1: 構成オプションの選択

ステップ1 構成オプション

項目設定値
選択新しいクラスタ用のOracle Grid Infrastructureの構成

新規クラスタを一から構築します。他の選択肢(既存クラスタへのノード追加・アップグレード)は既にクラスタが存在する場合に使用するため、ここでは選びません。

「次へ」をクリック。


ステップ 2: クラスタ構成の選択

ステップ2 クラスタ構成

項目設定値
選択Oracleスタンドアロン・クラスタの構成

本環境は2ノード固定構成の独立したRACクラスタです。「Oracle Flex Cluster」はハブ・リーフ型の階層構造を持つ大規模環境向けの構成のため、2ノード固定の本環境では不要です。

「次へ」をクリック。


ステップ 3: Gridプラグ・アンド・プレイの情報

ステップ3 Gridプラグ・アンド・プレイ

項目設定値
クラスタ名rac19-cluster
SCAN名ol8-rac19-scan
SCANポート1521
GNS構成しない
  • クラスタ名 はCRS(Cluster Ready Services)内部の識別子です。クラスタ内で一意であれば任意の名前が使えます。
  • SCAN(Single Client Access Name) はクライアントがクラスタに接続する際の単一エンドポイントです。第3回でDNSに登録した3つのIPアドレスにラウンドロビン解決されることで、クライアント接続を各ノードへ分散させます。
  • SCANポート 1521 はOracleリスナーのデフォルトポートです。クライアント接続文字列で特にポートを指定しない場合はこのポートが使われます。
  • GNS(Grid Naming Service) はノードを動的に追加・削除できる大規模クラスタ向けのDNS委任機能です。本環境は2ノード固定構成でVIP・SCANをBINDへ静的登録済みのため不要です。

「次へ」をクリック。


ステップ 4: クラスタ・ノードの情報

ステップ4 クラスタ・ノードの情報

「追加」をクリックしてノードを追加。

ノード名(パブリック)仮想IPホスト名
ol8-rac19-21ol8-rac19-vip-24
ol8-rac19-22ol8-rac19-vip-25

「SSH接続」をクリック

ステップ4 SSH確認

項目設定値
OSユーザー名grid
OSパスワード(空欄)
キーの再使用「ユーザー・ホームに存在するプライベートおよびパブリック・キーを再使用します」にチェック

GIインストーラーはノード間SSH経由でバイナリをリモートノードへ配布します。第4回で手動作成したPEM形式の鍵ペアをそのまま使うため「キーの再使用」を選択します。

「テスト」ボタンをクリックして両ノード間のSSH接続が成功することを確認します。

ステップ4 SSH確認

「次へ」をクリック。


ステップ 5: ネットワーク・インタフェースの指定

インタフェース用途
ens18パブリック
ens19ASMおよびプライベート

GIがどのNICを何の目的で使うかを指定します。

  • ens18(パブリック): クライアント接続・VIPのフェイルオーバーに使用します。
  • ens19(ASMおよびプライベート): Cache Fusionのブロック転送(インターコネクト)とASMハートビートの両方を担います。本環境は2NIC構成のため、インターコネクトとASMトラフィックを同一NICに集約します。

「次へ」をクリック。


ステップ 6: 記憶域オプションの使用

ステップ6 記憶域オプション

項目設定値
選択Oracle Flex ASM

Oracle Flex ASMは各ノードにASMインスタンスが1つ起動し、クラスタ全体のストレージを管理します。19c以降のデフォルト推奨構成で、Standard ASMより障害耐性が高い設計になっています。

「次へ」をクリック。


ステップ 7: グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ(GIMR)

ステップ7 GIMR

項目設定値
GIMRの構成いいえ

GIMRはManagement Databaseとも呼ばれ、Cluster Health MonitorやOracle Traceなどの監視データを格納する専用DBです。構成すると追加のASMディスクグループとメモリが必要になります。ラボ環境では不要です。

「次へ」をクリック。


ステップ 8: ASMディスク・グループの作成

ステップ8 ASMディスク・グループ

項目設定値
ディスク・グループ名DATA
冗長性外部
ディスク/dev/sdb にチェック

OCR(クラスタ構成情報)・投票ディスク・DBデータファイルを格納するディスクグループです。

冗長性の選択肢はASMレベルのミラーリング本数を意味します(ノーマル=2本・高=3本・外部=1本)。本環境はディスクグループあたり1本構成のためミラーリングができず「外部」を選択します。ストレージ側の冗長性はiSCSI経由のProxmox仮想ディスクに委ねます。

「次へ」をクリック。


ステップ 9: ASMパスワードの設定

ステップ9 ASMパスワード

項目設定値
SYSパスワード任意のパスワード
ASMSNMPユーザー・パスワード任意のパスワード

ASMインスタンス(+ASM1/+ASM2)へSYS接続するためのパスワードです。DBCAやASMCAからASMへ接続する際に使用します。

ステップ9 複雑さ警告ダイアログ

既知の警告: [INS-30011] パスワードが複雑さの最低要件を満たしていません。 → 「はい」をクリックして続行してください(ラボ環境のため)。

「次へ」をクリック。


ステップ 10: IPMIの設定

ステップ10 IPMI

項目設定値
選択Intelligent Platform Management Interface (IPMI)を使用しない

IPMIはノード障害時にハードウェアレベルでリモートリセットするフェンシング機能です。スプリットブレイン(両ノードがマスターと判断する状態)の解消に使われます。本環境はProxmox上のVMのため物理IPMIハードウェアがなく、使用しません。

「次へ」をクリック。


ステップ 11: 管理オプションの設定

ステップ11 管理オプション

項目設定値
Enterprise Manager Cloud Controlへの登録登録しない

EM Cloud Controlはクラスタ・DBを集中管理するGUIツールです。本環境では構築していないため登録しません。

「次へ」をクリック。


ステップ 12: 権限付きオペレーティング・システム・グループ

ステップ12 OSグループ

グループ種別設定値
Oracle ASM管理者(OSASM)asmadmin
Oracle ASM DBA(OSDBA for ASM)asmdba
Oracle ASMオペレータ(OSOPER for ASM)asmoper

第4回で作成したOSグループをASM管理権限に割り当てます。このグループに所属するOSユーザーはパスワードなしでASMインスタンスへのOS認証接続が許可されます(sqlplus / as sysasm など)。

「次へ」をクリック。


ステップ 13: インストール場所の設定

ステップ13 インストール場所

項目設定値
Oracleベース/u01/app/grid
ソフトウェアの場所(Grid Home)/u01/app/19.0.0/grid(自動入力)
  • Oracleベース はログ・診断ファイル(ADRホーム)の格納先です。
  • ソフトウェアの場所(Grid Home) はGIバイナリの実体です。第4回でインストーラーを展開済みのパスが自動入力されます。

「次へ」をクリック。


ステップ 14: インベントリの作成

ステップ14 インベントリ

項目設定値
インベントリ・ディレクトリ/u01/app/oraInventory
oraInventoryグループoinstall

OracleインベントリはOracle製品のインストール履歴とOracleホーム一覧を管理するディレクトリです。OPatchやDBCAがこのディレクトリを参照します。oinstallグループのユーザーがアクセス権を持ちます。

「次へ」をクリック。


ステップ 15: rootスクリプトの実行構成

ステップ15 rootスクリプト

項目設定値
実行方法構成スクリプトを自動的に実行 にチェック
認証方法rootパスワードを使用 を選択
rootパスワードrootパスワードを入力

GIインストール完了後、orainstRoot.sh(インベントリ登録)と root.sh(CRSデーモン起動)を両ノードで順番に実行する必要があります。自動実行を選択するとインストーラーが適切なタイミングで両ノードのrootスクリプトを自動実行します。手動を選択した場合は別途ターミナルでタイミングを管理する必要があります。

「次へ」をクリック。


ステップ 16: 前提条件のチェック

CVU(Cluster Verification Utility)がOSカーネルパラメータ・ユーザーグループ・ネットワーク設定などを一括検証します。第4回の設定が正しく反映されていれば大半はパスします。

fixupスクリプトが表示された場合:

「修正および再チェック」ボタンが表示されたら、MobaXtermでノード1・2それぞれのrootターミナルから実行します(パスは実行時に表示されるものを使用)。

# ノード1・2それぞれで実行
/tmp/GridSetupActions***/CVU_19_grid_***/runfixup.sh
# → All Fix-up operations were completed successfully.

fixup完了後、「再チェック」をクリックします。

残存する警告の対処:

警告内容対処
policycoreutils-python-2.5-17OL8での誤検知。無視して続行
最大ロック・メモリー (memlock)第4回 4-4でlimits.dへ設定済みであれば無視

前提条件チェック 警告無視

「すべて無視」にチェックを入れて「次へ」をクリック。

既知エラー(インストーラー再起動が必要なもの):

エラーコード内容対処
[INS-08101] supportedOSCheckNullPointerExceptionCV_ASSUME_DISTID=OL7 を設定して再実行
[INS-08109] GridPlugPlayInfoUIKubernetes検出バグダイアログで「はい」をクリックして続行

ステップ 17: サマリー

ステップ17 サマリー

確認項目期待値
クラスタ名rac19-cluster
SCAN名ol8-rac19-scan
クラスタ・ノードol8-rac19-21、ol8-rac19-22
ASMディスク・グループDATA / 外部 / /dev/sdb
Grid Home/u01/app/19.0.0/grid
Oracleベース/u01/app/grid

設定内容を確認して「インストール」をクリック。


ステップ 18: 製品のインストール

ステップ18 インストール進捗

インストールが自動実行されます。ノード2へのバイナリ転送・両ノードへのパッチ適用・rootスクリプト実行が順番に行われるため、30〜60分程度かかります。

インストール中に以下のダイアログが表示された場合は 「はい」 をクリックして続行します。

ステップ18 続行ダイアログ

「インストール中にエラーが発生しました。インストールを続行しますか?」

rootスクリプトが自動実行されます。進捗バーが100%になるまで待ちます。


ステップ 19: 終了

ステップ19 完了

以下のメッセージが表示されればGIインストール成功です。

「クラスタ用のOracle Grid Infrastructureの構成に成功しました。」

「閉じる」をクリック。

インストール後の動作確認を行います(gridユーザーで実行)。

# クラスタウェアのリソース起動確認(両ノードのリソースがONLINEになっていること)
crsctl status res -t

5-2. RECOディスクグループの作成(ノード1、gridユーザー)

GIインストール時に作成したDATAに加え、高速リカバリ領域用のRECOディスクグループをASM Configuration Assistant(asmca)で作成します。

su - grid

# ホストとユーザの確認
hostname && whoami

asmca

ASM構成アシスタント起動

GUIが起動します。

ディスク・グループ一覧(DATAのみ)

「ディスク・グループ」タブに現在のディスクグループ一覧が表示されます。「作成」ボタンをクリックします。

ディスク・グループの作成ダイアログ

以下のように設定します。

項目設定値
ディスク・グループ名RECO
冗長性外部
ディスク/dev/sdc にチェック

「OK」をクリック。

DATA・RECO MOUNTED確認

作成後、DATA・RECO両方が MOUNTED になっていることを確認します。

# DATA・RECO両方がMOUNTEDになっていること
asmcmd lsdg

5-3. OPatch確認(ノード1・2、gridユーザー)

RU 19.28.0.0.0 が正しく適用されていることを確認します。

# ホストとユーザの確認
hostname && whoami

# 適用済みパッチ一覧
${ORACLE_HOME}/OPatch/opatch lspatches

# 詳細インベントリ確認
${ORACLE_HOME}/OPatch/opatch lsinventory -detail

まとめ

この記事では以下を完了しました。

  • Grid Infrastructure 19.28 RU のインストール(gridSetup.sh -applyRU)
  • RECOディスクグループの作成(+DATA / +RECO)
  • OPatch確認

次の記事では、Oracle Databaseのインストール(runInstaller -applyRU)とDBCA(Database Configuration Assistant)によるRAC CDB+PDBの作成を行います。